空ヲ刻ム者 新橋演舞場 3月23日
スーパー歌舞伎Ⅱセカンド「若き仏師の物語」と銘打っての興行。
それほど多くのジャンルの演劇を観てきたわけでもないのに、歌舞伎ってなに?新劇ってなに?とふと思う。
話は素直に面白かったし、歌舞伎演出の素晴らしさがよく出ている。
私が考える歌舞伎のいいところ。
主従の絆、親子の情愛、敵討ち、近松の心中ものではない世話物(近松は文楽が好き)、この世のものではないものが出てくる話。浄瑠璃、三味線、鼓、笛による音に乗せた動き、リズミカルな科白回し、視覚に訴える登場人物の状況をこれでもかと表したヘアメイク、衣装。回り舞台、セリなどの大掛かりな装置。なんですね…。
今度の舞台は、音楽は三味線をあまり使わず二胡、尺八、さまざまな琴。どちらかと言うと大陸風。衣装も古代日本や大陸風で時代背景もわざと曖昧。
4代目は王道の主人公を選択し、蔵之介さんたちがすっと参加しやすい役を設定したのでしょうね。
蔵之介さん演じる一馬は、自分の気持ちを吐露しつつ双葉に少し歩み寄り、手を差し伸べて触れるか触れないかでこぼれる色気にはっ!とする感じでした。
笑也さんは、姿も声もいいしすっかり魅せられてしまいました。右近さんも口跡がとても素敵な役者さん。お二人とも舞台を観るのは初めてですが、今後ご縁があったら他のお役も観てみたい。
4代目は口跡いいですし、身体も動く、頭脳は明晰で言うことなし、なのだ。
ただ申し訳ないけれど、2度3度同じ作品を見たいひとか、と問われると少々返答に詰まる…ね。
主人公には、問答無用の魅力が欲しい。何度も観たい、場所を変えても観たいと思わせるものが欲しい。力強くその場すべてを吸い込む、言葉では言い表せないその空間を支配する力が欲しい。その演技を通してひとの暗部を覗いてしまったようなカリスマ性が欲しい。
4代目を継ぐと女形はあまりできないの?おきゃんでかわいらしい女形がたいそう魅力的なひとなのに。
おもだかや一門を背負う大変さをひしひしと感じるお芝居でした。