住めば都

気が向いたら、好きな俳優、観劇記録や日常ごとを独断と偏見に満ちた表現で書き散らかしています。思考が合わないかたはごめんなさい。

人形浄瑠璃文楽5月公演 5月11日 第2部

いまさらですが引退公演、引退狂言っていう言葉があるのねと思う日々。住大夫師匠がお出になる第1部に比べて、第2部はシンプル。近松門左衛門女殺油地獄と弁慶勧進帳でおなじみ、安宅関(あたかのせき)、今月か先月か歌舞伎座でもかかっていますね。あまりにもかかるので、「またかのせき」という別名があるそうです。歌舞伎でも観ているからか、今回の松葉の書き割りがとてもはっきりきれいにくっきりに見えて、おもしろかったです。松の葉をあまりぼかさない書き方だったの。

 女殺油地獄っておどろおどろしいタイトルです。うん、なんというか犯行に及ぶ人物の心理状態というか心境の温度差はある、しかし凄惨な殺しの場面が有名な狂言。代表的なものはいくつかあって、「夏祭浪花鑑」の泥場と「伊賀越道中双六」の岡崎の段とこれがぱっと思い浮かぶ。まだあるけれど、伊勢音頭など大量衝動殺人は外しました…。人形だから殺しの場面がドラマに比べると観やすいとは言えますが、だからってどうにも慣れないし不思議な感覚に陥る。

未確認ですが、近松門左衛門は初めて衝動殺人を描いたとも言われているらしく、殺人に至るまでの心理描写がとても現代的というか、江戸時代当時の感覚と今はなんら変わらない。そしてそういう状態を芝居にしようと思うセンス。その当時に初見だったら大興奮だろうなぁ。

今回は、お吉さんより与兵衛に目がいきがちだったなぁ。与兵衛、ふてくされて柱によりかかるさまが、みていて困る色気があるのですよ。義父と母から甘やかされて育っているので、簡単に拗ねたりふてくされたりするし、そういう風に表情や態度にあからさまに出すので、年上女の警戒心をやすやすと解いてしまうのです。ま、お吉さんはご近所さんですけどね。文楽って誰がどうというより床と人形さんのバランスがいいのが個人的には好きなのだけれど。今回は床がとてもよくて、人形は勘十郎さん@与兵衛かな。殺しの場面で気持ちが高揚するなんて、ちょっと後ろめたさを抱えながら。

勧進帳は、玉女さん@弁慶が大活躍。清十郎さん@富樫はとても雰囲気が合うといいますか、二枚目や深窓のお嬢様をおやりになると相変わらずいいですね。

過去の公演記録で簑助さんの与兵衛と文雀さんのお吉を観たような気がするのだけれど…。記憶あいまい。さらに、玉男さんの与兵衛も(ビデオで)観てみたい。

文楽の公演記録は「文化デジタルライブラリー」で検索できるのだけれど、そこから国立劇場視聴室にどうしてリンクしないのかな。こういう公演記録を、予約すれば一般人も視聴室でビデオ鑑賞できるって知られていないと思う。そんなに広いところではないから、あまりたくさん来られても困るからかしら。まぁ、もともと研究者対象っていう雰囲気はあるけどね。そして、毎月第3水曜日しか視聴室は開室延長されないです。なので、早めに予約しないといっぱいですと断られることも!